Lens Impression
スイスのkern社といえば、言わずと知れたAlpaカメラ用標準レンズ「マクロスイター50mmf1.8」「同f1.9」を製造したメーカーですが、この両レンズが有名なだけに、いったい他にどのようなレンズがあるのか興味が湧くところですが、8mm、16mm用シネレンズを除くとあまり知られていません。
シネレンズにはスイターSwitar以外にYvar、Pizarなどがあります。レンズ名とレンズ構成に一貫性はあまり見られない会社ですが、Yvarは3枚玉が多いですね。Pizarには4群5枚(1+2/1+1)などがあります。Switarのレンズ構成はバリエーションが多すぎてここでは取り上げません。
そうそう、1920年代に発売された超精密カメラCompassコンパスのレンズもKern社の35mmf3.5アナスティグマートレンズ(テッサー型)でした。
Kern社の資料を見ても今回のレンズ名Kinotarキノターは登場しません。同社の関連資料を参照すると、まだSwitarなどの名称が始まる前の映画用のレンズには社名をもじって「Kerner、Kernon」などのレンズ名がありますが、まだ開放f値がf6.3,f4.5というような暗いレンズの時代です。その後1930年代になると同社は多くの映画用レンズを作り始めますが、それが後のPaillardパイヤール社、Bolexボレックス社との提携に繋がっていくのでしょう。
ただ、1932年の同社映画用レンズを見ると、名称はまとめてKino-Aufnahme Objektiv(映画撮影用レンズ)としか記載されておりませんが、その中に今回のレンズと同じ45mmf1.8が登場するので、おそらくこのレンズと同型だと思われます。同時代としては非常に明るいこのレンズは説明によると、近紫外部から黄色の波長範囲の光に対して感度をもつオルソフィルムOrthochromatic
film、さらに赤色光まで感度をもつパンクロフィルムPanchromatic film用に特別に作られたと記載されています。
おそらく35mm映画用と思われますので、35mmフルサイズカメラですと周辺が少し欠けますが、オールドレンズの典型ともいうべき美しい滲みを伴った楽しい画像を提供してくれます。めったに目にしない(私も初めて見ました)レンズですが、描写を楽しんでいただければと思います。
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